コラム

2026/01/29 コラム

【寺院法務】ペットと一緒に入れるお墓は作れる?法律上の規制と注意点

はじめに

「長年連れ添ったペットと同じお墓に入りたい」
「愛犬の遺骨を納骨堂で預かってほしい」

近年、ペットを家族の一員として大切にする「コンパニオン・アニマル」という考え方が広まり、寺院に対してもこのような相談が寄せられることが増えています。

一方で、仏教の伝統的な教義では、動物は「畜生道」にあるとされ、人間と同じお墓に入れることに対して慎重な意見も根強く存在します。また、他の檀信徒からの反発や、公衆衛生上の懸念、税務上の取り扱いなど、寺院がペット供養やお墓の提供に取り組むには、クリアすべき課題がいくつもあります。

本記事では、ペットと一緒に入れるお墓(共葬墓)に関する法的な規制、寺院が依頼を受けた場合の対応、そして税務上の留意点について解説します。

Q&A

Q1. 人間の遺骨とペットの遺骨を同じお墓に入れることは、法律で禁止されていますか?

いいえ、法律(墓地、埋葬等に関する法律)では禁止されていません。

同法が規制する「死体」や「焼骨」は人間のものを指しており、ペットの遺骨は規制の対象外です。したがって、同じ区画やカロート(納骨室)に納めることは法的には可能です。

Q2. 檀家から「ペットの遺骨を納骨したい」と言われましたが、断ることはできますか?

はい、断ることができます。

人間の遺骨の場合、正当な理由なく埋蔵を拒むことはできませんが(墓埋法13条)、ペットの遺骨は法の対象外であるため、この応諾義務は適用されません。寺院の教義や方針、他の利用者への配慮等を理由に拒否することが可能です。

Q3. ペットの葬儀や納骨堂の運営を始めた場合、税金はかかりますか?

「収益事業」とみなされ、法人税が課税される可能性があります。

一般に宗教活動は非課税ですが、ペットの葬儀や供養、納骨預かりについて料金表を定めて広く受け入れているようなケースでは、請負業や倉庫業といった収益事業に該当すると判断した最高裁判例があります。

解説

1. 法律上の位置づけ(墓埋法との関係)

「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」は、人間の遺体の埋葬や焼骨の埋蔵について定めた法律です。

同法において「死体」とは人間の死体を指し、「焼骨」も同様に人間のものを指します。そのため、動物の死体や遺骨は、墓埋法の規制対象外となります。

  • 同じお墓に入れても違法ではない
    法律上、人間のお墓にペットの遺骨(焼骨)を「副葬品」のような扱いで一緒に納めることは禁止されていません。
  • ペット専用のお墓を作る場合
    ペット専用の霊園や納骨堂を設置する場合も、墓埋法の許可は直接には不要と解釈されますが、各自治体の条例等で動物霊園の設置基準が定められている場合があるため、事前の確認が必要です。

2. 寺院としての判断と対応

法律上は可能であっても、寺院がペットの納骨を受け入れるかどうかは、宗教的な判断と管理上の判断に委ねられます。

(1) 教義および感情面での配慮

仏教の伝統的な考え方では、人間と動物を区別することが一般的です。「動物の遺骨を仏聖な墓地に入れること」に対して、抵抗感や不快感を持つ檀信徒も少なくありません。

無用なトラブルを避けるため、もし受け入れる場合は、「人間とは別のペット専用の合祀墓を設ける」「樹木葬エリアでのみ共葬を認める」といったゾーニング(区分け)を行う寺院が増えています。

(2) 納骨依頼を拒否する権利

墓埋法13条は、墓地管理者に「正当な理由がなければ埋葬等を拒んではならない」という応諾義務を課しています。しかし、これはあくまで「人間」の遺骨に関する規定です。

ペットの遺骨についてはこの義務が及ばないため、寺院側は「当寺院の方針としてペットの納骨は受け付けていない」として自由に断ることができます。

(3) 衛生面と管理規則の整備

もしペットの納骨を受け入れる場合、以下の点に注意して「墓地使用規則(管理規程)」を整備しておく必要があります。

  • 焼骨限定: 土葬は衛生上の問題や野生動物による掘り返しのリスクがあるため、完全に火葬された焼骨(遺骨)に限定するべきです。
  • 許可制: 無断で納骨されることを防ぐため、必ず住職(管理者)の許可を要すると定めます。
  • 他の利用者への配慮: 鳴き声や臭いなど、墓参時のマナーについても規定しておくことが望ましいです。

3. 税務上の留意点(収益事業課税)

寺院がペット供養に取り組む際、注意が必要なのが税務です。

本来の宗教活動(人間のお布施など)は非課税ですが、ペット供養については、以下の最高裁判決により「収益事業」と判断されるリスクが高まっています。

最高裁判所平成20年9月12日判決

宗教法人が行ったペット葬祭業(葬儀、火葬、納骨、法要等)について、料金表に基づいて料金を徴収し、パンフレットやホームページで宣伝していたことなどから、請負業、倉庫業、物品販売業に該当し、法人税の課税対象となる「収益事業」にあたると判断しました。

この判決では、たとえ宗教的な儀式の形式をとっていても、以下の要素がある場合は課税対象となり得ると示されています。

  • 対価性がある(「お布施」ではなく「料金」として金額が決まっている)。
  • 一般のペット葬祭業者と競合する事業形態である。
  • 檀信徒に限らず、広く一般から受け入れている。

逆に言えば、檀信徒のみを対象とし、対価性のない「お布施」として受け入れる範囲であれば、非課税と判断される余地は残っていますが、慎重な運用が求められます。

弁護士に相談するメリット

ペット供養やお墓の提供は、新しい時代のニーズに応える施策である一方、従来からの檀信徒との摩擦や、税務トラブルの原因にもなり得ます。弁護士に相談することで、以下のようなサポートが受けられます。

  1. 墓地使用規則(管理規程)の改定・整備
    ペットの納骨を受け入れる場合、あるいは明確に禁止する場合、いずれにしても規則への明記が必要です。トラブルを未然に防ぐための条項を作成します。
  2. 事業者との契約チェック
    ペット葬儀社や霊園開発業者と提携する場合、名義貸し(違法行為)にならないよう、業務委託契約書の内容をリーガルチェックします。
  3. 近隣トラブル・檀信徒対応
    動物霊園の設置にあたり近隣住民から反対運動が起きた場合や、檀信徒との合意形成について、法的な観点からアドバイスを行います。

まとめ

ペットと一緒に入れるお墓の提供は、法律上禁止されてはいませんが、寺院にとっては教義上の整理、既存の檀信徒への配慮、そして税務リスクへの対応が重要です。

安易に「ペット可」として募集を始めると、思わぬ課税処分を受けたり、檀信徒離れを招いたりするおそれがあります。

新しい供養の形を導入する際は、寺院法務に精通した弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。寺院の伝統を守りつつ、時代のニーズに適切に対応するための法的サポートを提供いたします。


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