コラム

2024/11/27 コラム

墓地経営者が破産した場合の墓地の扱い

Q&A

Q:墓地を経営している会社が破産した場合、私たちの墓地使用権はどうなりますか?

A:墓地は先祖を祀る重要な場所であり、その使用権は特別な法的保護がなされています。破産が生じた場合も、墓地の「固定性」や「永続性」を踏まえた法的対応が取られます。この記事では、墓地経営者の破産に伴う影響や墓地使用者の権利がどのように守られるかについて解説します。

1.墓地経営者の破産とは

墓地は、個人や家族にとってかけがえのない場所であり、単なる土地とは異なり、文化的・宗教的な価値を持っています。墓地経営には安定した運営が不可欠ですが、現実には経営の安定が難しく、近年は墓地経営者の破産事例が増加しています。

経営破綻の背景

墓地経営の破綻は複雑な要因が絡み合っています。厚生労働省が挙げる主な要因は以下の通りです。

1. 金銭管理のリスク

墓地使用権の販売によって一時的に多額の資金が集まることがありますが、この資金を他の事業へ流用したり、不適切な経営により損失が生じることがあります。さらに、他者の経営介入によって利益を奪われることも少なくありません。

2.低金利による影響

バブル期と比較して、近年は金利が著しく低下しています。低金利環境では、資産運用が困難になり、墓地経営の財政基盤が不安定になります。

3.長期的な需要の変動

墓地事業は長期にわたる需要の見通しが難しく、少子化や核家族化の進行によって家族意識が薄れ、墓地の需要が減少しています。これが経営見通しをさらに厳しいものにしています。 

2.墓地使用権の法的性質

墓地使用権は一般的な財産権とは異なり、特別な性質を持っています。墓地には移転が難しい「固定性」と、代々継承されていく「永続性」があります。この特別な性質があるため、墓地の使用権は法的に特別な保護がなされています。

墓地使用権の具体的な法的構造

墓地使用権は、いくつかの法的性質に分類されます。

  • 永代借地権
    永代借地権として扱われる場合、墓地の使用権は一代限りで終わらず、後の世代へ引き継がれます。
  • 慣習上の物権
    慣習に基づき認められる物権として、墓地使用権は法律上の保護を受けるケースもあります。
  • 使用借権
    土地の使用貸借契約に基づく権利で、墓地使用権がこの法的構造を持つこともあります。

これらの法的性質は、明確に定義されていない部分が多く、裁判例や判例に委ねられるケースが少なくありません。 

3.破産手続と墓地使用権

墓地経営者が破産手続に入った場合、墓地の運営はそれ以上継続できなくなります。破産手続は、破産管財人が財産を管理し、債権者への分配を行うことになりますが、墓地の取り扱いは特に慎重に行われます。

破産法第53条の適用

破産法第53条では、破産管財人が双務契約の解除または債務の履行を選択できると定められています。墓地使用契約も双務契約の一つであり、通常であれば破産管財人は契約の解除を選択できるのですが、墓地の特別な性質を考慮し、機械的に解除を行うことは適切ではないとされています。

墓地は移転できない施設であり、使用者にとっては大切な先祖を祀る場所です。したがって、破産手続でこの特別な施設を単純に処理するのは宗教的、文化的な背景から問題が生じます。

4.墓地使用者の権利保護

墓地使用者の権利を保護するためには、法的な工夫が必要です。以下にそのポイントを解説します。

使用権の存続

破産手続においても、墓地の使用権は特別に保護されるべきです。墓地に墳墓が実際に存在している場合、破産管財人が契約を解除することは妥当ではありません。墓地使用者の権利が守られるよう、使用権は存続するという解釈が妥当であり、墓地が第三者に売却される場合でも、「使用権の負担付き」として処分されることが適切です。

5.弁護士に相談するメリット 

墓地経営主体の破産問題は法的に複雑であり、専門家のサポートが不可欠です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、以下のようなサポートを提供しています。

1.法的アドバイスの提供

墓地使用権に関する法律問題は、個々の状況により異なります。私たちは個別のケースに応じた具体的なアドバイスを行います。

2.破産手続のサポート

破産手続の中で墓地使用権を守るための対応を一緒に考え、最善の方法を提案します。特に、破産管財人との交渉や使用権の保護に関する手続きを代行します。

3.契約の見直し

墓地使用契約が法的に不十分な場合は、必要な改善提案を行い、今後のリスクを軽減するサポートをいたします。

まとめ

墓地経営者の破産は、墓地使用者にとって重大な問題ですが、法的な解釈や保護の仕組みがあるため、権利が完全に失われるわけではありません。墓地の「固定性」や「永続性」が尊重されるべきであり、その特別な価値に応じた対応が求められます。トラブルが生じた際には、お早めに弁護士に相談し、最善の解決策を見つけることが重要です。

 


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