コラム

2024/12/21 コラム

寺院運営における管理職の残業代請求の可否と労働時間管理のポイント

Q&A

ご質問

寺院会館を運営していますが、管理職として働く従業員が残業代を請求する場合、支払わなければならないのでしょうか?また、労働時間管理についてどのように対応すればよいのでしょうか?

回答

管理職として働く従業員への残業代の支払いは、その従業員が労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかで判断されます。単なる役職名や手当の支給だけでは管理監督者と認められない場合もあります。

はじめに

寺院運営において、労働問題、とりわけ管理職の残業代支払いの可否や労働時間管理の問題は避けられない課題です。多忙な時期や繁忙期には管理職も残業をせざるを得ないケースが増えますが、管理職という肩書きだけで残業代の支払いが免除されるわけではありません。

本稿では、寺院運営における適切な労働時間管理と、労使間のトラブルを未然に防ぐためのポイントを解説します。

1.労働基準法における管理監督者の定義

労働基準法では、管理職に該当する従業員を「管理監督者」として特別な扱いをしています。この「管理監督者」に該当する場合、時間外労働(残業)や休日労働に関する規制が適用されず、残業代を支払う義務もありません。しかし、次の要件を満たさなければ管理監督者と認められない点に注意が必要です。

職務権限

管理監督者は、経営に関する重要な事項の決定に関与できる立場であることが求められます。例えば、経営会議への参加や従業員の採用・解雇、給与評価に影響を与える権限があるかどうかが重要です。

勤務態様

管理監督者には出勤・退勤の自由度があり、通常の従業員と異なる勤務態様が認められることが条件です。具体的には、出勤時間や退勤時間の裁量があるかどうかが判断材料となります。

給与や待遇

管理監督者としての地位にふさわしい給与や待遇を受けているかが問われます。一般の従業員と同等かそれ以下の待遇では管理監督者とは認められません。

2.名ばかり管理職と残業代請求のリスク

形式的に「管理職」として肩書きを付与し、管理職手当を支給している場合でも、実態が伴わなければ「名ばかり管理職」とみなされ、残業代請求をされるリスクがあります。特に以下のような場合には名ばかり管理職と判断される可能性が高くなります。

実際の業務内容が一般職とほぼ同じ

単純に労働力として利用されている場合や、管理的な権限がほとんどない場合には、管理監督者として認められません。

勤務態様が一般職と同等

タイムカードで厳密に管理され、出退勤時間に裁量がない場合には管理職とは言えません。 

給与や待遇が不十分

管理職手当を支給していても、それが残業代を含むような金額ではない場合や、一般職と比べて大きな優遇がない場合にはリスクが高まります。 

3.残業代請求への対応と予防策

管理職が労働基準法上の管理監督者に該当しない場合、残業代を支払う必要があります。このようなトラブルを防ぐために以下の対策を講じることが重要です。

勤務実態の確認

従業員が管理監督者としての基準を満たしているかを定期的に確認することが重要です。特に、職務権限や待遇面での不備がないかをチェックしましょう。

管理職手当の位置づけの明確化

管理職手当が固定残業代の趣旨を含む場合、その旨を契約書や就業規則に明記し、従業員に説明する必要があります。

就業規則の整備

寺院の実態に合わせた就業規則を整備し、管理職と一般職の役割や労働時間の取り扱いを明確にしておきましょう。

4.労働時間管理のポイント

労働時間管理を適切に行うことは、労使間の信頼関係を築き、トラブルを防ぐために欠かせません。以下のポイントを押さえましょう。

労働時間の見える化

従業員の労働時間を記録し、過労防止や残業代の適正支払いの基礎資料とすることが重要です。タイムカードや勤怠管理システムの活用が効果的です。 

定期的な労務チェック

労働時間の管理状況や残業の実態を定期的に確認し、長時間労働の是正や労働条件の改善を行います。

管理職への労働環境の配慮

管理職としての職務権限や自由度が不足している場合には、役割や待遇を見直すことが必要です。

弁護士に相談するメリット

労働問題は法律の適用が複雑であり、誤った対応はトラブルの深刻化や訴訟リスクにつながります。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、寺院の運営実態に即した法的アドバイスを行い、労務トラブルを未然に防ぐサポートを提供します。以下のような点でのご相談を承ります。

  • 労働基準法に基づく管理監督者の該当性の判断
  • 就業規則や労働契約書の整備
  • 労務トラブル発生時の迅速な対応

まとめ

寺院運営における管理職の残業代請求の可否は、管理監督者に該当するか否かにより判断されます。労働時間管理の適切な実施は、トラブル防止に直結します。労働問題は専門的な知識が求められるため、早めの相談が重要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、労務問題の解決に向けた総合的な支援を行い、寺院運営の円滑化を目指します。

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