コラム

2024/12/12 コラム

代表役員の住職が認知症を発症した場合の対応上の留意点

はじめに

寺院の代表役員である住職が認知症を発症すると、法人の円滑な運営に支障をきたす可能性が高くなります。認知症の進行により判断力が低下し、寺院運営の重要な意思決定が困難になる場合には、適切な法的手続きや制度の利用が求められます。ここでは、認知症を発症した住職の交代手続きや法的な留意点について説明し、弁護士に相談することの重要性についても解説します。

Q&A

Q:住職が認知症を発症した場合、寺院としてどのように対応すれば良いのでしょうか? 

A:住職が認知症を発症すると、寺院の代表役員としての職務遂行が難しくなる場合があります。こうした状況においては、まず医師による診断を受け、認知症の状況を確認した上で、家庭裁判所に「後見」もしくは「保佐」の申立てを行うことが考えられます。また、宗派や法人規則の定めに基づき、住職の交代手続きを進める必要があります。専門家の助言を仰ぎつつ、適切な対応を取ることで、寺院の安定した運営を確保することが可能です。

代表役員の住職が認知症を発症した場合の対応方法 

1.医師による診断を受ける

まずは、住職が実際に認知症を発症しているかどうかを確認するために医師の診断を受けることが必要です。診断の結果、認知症と判断された場合には、寺院運営に必要な判断力や意思疎通の能力が著しく低下しているかどうかが重要な判断材料となります。

2.家庭裁判所に後見・保佐の申立てを行う

認知症により住職の判断力が著しく低下している場合には、家庭裁判所に対して「後見」または「保佐」の開始を申立てることが可能です。「後見」は重度の認知症患者に対する支援制度で、「保佐」は比較的軽度な場合に適用されます。この手続きにより、住職の財産管理や法律行為を代行する者が裁判所により選任されます。

3.宗派や法人規則の確認

次に、寺院の宗派規則や法人の定款を確認します。多くの宗教法人では、代表役員である住職に対し「成年被後見人」や「被保佐人」になると資格を喪失する規定が設けられています。この場合、家庭裁判所から後見や保佐の決定を受けた際には、宗派に対して資格喪失の申請を行うことが必要です。

4.住職の交代手続きの実施

認知症によって住職の職務遂行が困難な場合には、後任の住職を選任する必要があります。新たな住職を選任し、所轄庁への手続きも行います。これには、責任役員会の議決や、宗派の承認などが必要な場合があります。

対応上の法的留意点 

1.成年後見制度の適用

成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分な場合に適用される制度です。後見開始が認められると、対象者は財産管理や法律行為に制約が生じます。寺院の住職が成年被後見人と認定された場合には、宗派の規則に基づいて代表役員の資格喪失手続きが必要になります。

2.宗教法人法改正への対応

令和元年の宗教法人法改正により、単に成年被後見人や被保佐人であることだけでなく、実際に職務遂行に必要な判断力や意思疎通能力が不十分である場合にのみ資格喪失が適用されるようになりました。このため、住職が後見や保佐の決定を受けた場合でも、宗派の規則に基づき判断力や意思疎通能力がある場合には資格を維持できるケースもあります。

3.後見申立ての証拠書類の準備

後見や保佐の申立てには、医師による診断書が重要です。裁判所のサイトに掲載されている診断書のひな形をあらかじめ用意し、医師に必要事項を記入してもらうことでスムーズな申立てが可能です。また、後見人や保佐人として適切な人選を行い、寺院運営に支障が生じないように備えることが求められます。 

弁護士に相談するメリット 

1.法的手続きの確実な進行

後見や保佐の申立て手続きや住職交代のための手続きを確実に進行するには、法的知識が不可欠です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、後見申立ての書類準備から宗派への申請手続き、所轄庁への報告まで一貫してサポートし、手続きの正確性を確保します。

2.寺院の運営体制の再構築支援

弁護士に相談することで、住職交代に伴う責任役員や組織体制の見直し、また後継者問題についても法的助言を受けることができます。寺院特有の事情に精通した弁護士が対応することで、信徒や取引先との信頼関係を維持しつつ、スムーズな運営体制の再構築を支援します。

3.後見制度や成年後見制度に関する適切なアドバイス

後見制度の適用には慎重な判断が求められます。弁護士に相談することで、住職が後見人の選定などで不利益を被らないよう、適切な助言を受けることができます。また、後見人とのコミュニケーションや寺院運営の効率化にもアドバイスをもらうことができ、安心して運営を続けることが可能になります。

まとめ 

住職が認知症を発症し、寺院運営に支障が生じる場合には、医師の診断から始め、家庭裁判所での手続きを経て、宗派や法人規則に沿った住職交代が必要です。法的な手続きを進めるにあたり、専門家である弁護士法人長瀬総合法律事務所のサポートを受けることで、寺院の運営を円滑に保ち、信頼を損なうことなくスムーズな交代が実現できます。

 

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