コラム

2024/11/15 コラム

寺院における財産目録等の閲覧請求とは

はじめに

宗教法人が運営する寺院は、その運営において多くの信者や地域社会との関係を築き、信頼を得ることが重要です。寺院の運営や会計情報の透明性を確保するためには、「閲覧請求権」の理解が欠かせません。これは、信者や利害関係者が特定の条件のもとに寺院の書類や帳簿の閲覧を求めることができる権利です。本稿では、この権利の詳細を解説し、寺院運営に役立つ法律知識を提供します。

Q&A

Q:寺院の帳簿などの書類を閲覧できる権利があると聞いたのですが、それはどのような場合に認められるのでしょうか?

A:宗教法人法に基づき、信者その他の利害関係人は、正当な利益を有し、不当な目的がない場合に限り、宗教法人が保有する一定の書類や帳簿を閲覧する権利があります。この制度は、寺院運営の透明性と公正性を高めることを目的としており、閲覧請求が適正に行われることで、寺院と信者の間の信頼関係を維持する重要な役割を果たします。

閲覧請求権の根拠条文 

信者その他の利害関係人の閲覧請求権は、宗教法人法第25条に規定されています。この条文では、宗教法人に特定の帳簿や書類を備え付けておくことが義務付けられており、信者やその他の利害関係人が閲覧を求めることができると定めています。具体的には、「正当な利益があり、不当な目的による請求でない場合」に閲覧が認められることが規定されています。この制度は、宗教法人の透明性向上を図る狙いがあります。

「信者その他の利害関係人」とは

「信者その他の利害関係人」(宗教法人法第25条3項)とは、具体的な範囲は一義的には各宗教法人が判断する必要があります。文化庁の説明によると、この範囲には寺院の檀徒、神社の氏子、宗教法人の運営に深く関与している役員や雇用関係者、また取引関係にある債権者や保証人などが含まれます。さらに、損害賠償請求権を有する者や包括宗教法人と被包括宗教法人など、宗教法人の行為によって直接的な影響を受ける人々も含まれるとされています。

各宗教法人は、これらの関係者の請求があった際に、その関係の具体性や請求の正当性を慎重に判断しなければなりません。

「帳簿を閲覧することについて正当な利益」とは 

「帳簿を閲覧することについて正当な利益」とは、請求者がその書類の内容を知ることで正当な利益を守ることができる場合を指します。例えば、寺院の財務運営が適切に行われているかを確認するために檀信徒が議事録や会計帳簿を確認したり、債権者が差押え可能な財産の調査を行ったりする場合がこれに該当します。

この判断は、請求者がどの程度寺院の活動に関与しているかや、閲覧の対象となる書類がどのような影響を持つかによって異なります。宗教法人は、正当な利益があるかどうかを、書類の種類や請求者の立場を考慮して判断する必要があります。

「不当な目的」とは

「不当な目的」とは、閲覧請求が宗教法人に不利益をもたらすためのものである場合を指します。具体的には、寺院の買収目的での閲覧、情報の売買、誹謗中傷を目的とした閲覧などが挙げられます。この判断も宗教法人が行う必要がありますが、場合によっては裁判所の判断を仰ぐこともあり得ます。

弁護士に相談するメリット

寺院における財産目録等の閲覧請求に関する法律問題は複雑であり、宗教法人が適切に対応しないと法的なトラブルに発展することがあります。このような点を踏まえ、法律事務所に相談することのメリットとして、以下の諸点があります。

  1. 法的リスクの軽減:専門の弁護士がアドバイスすることで、閲覧請求の正当性や不当性を的確に判断し、訴訟リスクを減らすことができます。
  2. 適切な手続きの整備:閲覧請求に対応するための内部手続きの整備や、閲覧の可否を決定する基準作りに関するサポートを受けられます。
  3. 利害関係者との交渉:トラブルの未然防止や円満解決のために、利害関係者との交渉を円滑に進めることができます。

当事務所では、寺院運営の実務に詳しい弁護士が在籍しており、寺院法務全般についてのご相談に応じています。

まとめ

寺院における財産目録等の閲覧請求は、宗教法人の運営透明性を保つために設けられた重要な権利です。しかし、請求に応じるべきかどうかの判断は慎重に行う必要があります。法的知識のないまま対応することは、場合によっては訴訟を招く恐れもあります。ぜひ弁護士に相談し、正しい対応を取ることで、寺院の適正な運営と信者との信頼関係を守りましょう。

 


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