コラム

2024/11/14 コラム

寺院におけるマタニティハラスメントとその対策

はじめに

お寺の運営には、独自の法律問題が数多く存在しますが、職場環境を良好に保つという課題は一般の企業と共通しています。特に、職場でのマタニティハラスメント(いわゆる「マタハラ」)の問題が近年社会的に注目されており、寺院でもこのような問題への対応が求められています。以下では、マタニティハラスメントの定義や寺院での対応策、さらに法的な観点から解説します。

Q&A

Q:マタニティハラスメントとはどのような行為を指すのでしょうか?寺院として具体的にどのような点に注意すればよいのですか?

A: マタニティハラスメントとは、妊娠や出産、育児休業の取得に関連して働く人が被害を受けるハラスメントです。主に、妊娠・出産を理由に職務から排除したり、育児休業の取得を妨害するなどの行為が該当します。この問題は、使用者として寺院も同様に責任を負うことになります。妊産婦や育児中の職員に対する支援体制を整えるとともに、法令を遵守した職場環境を確保することが大切です。これを怠ると、法的責任を問われるだけでなく、職員の士気や職場全体のモチベーションの低下、人材流出につながるリスクもあります。

マタニティハラスメントとは

マタニティハラスメントは、「制度利用への嫌がらせ」と「状態への嫌がらせ」という2つの大きなカテゴリに分類されます。

制度利用への嫌がらせ

産前休業や育児休業などの利用を妨害する行為、制度を利用したことを理由に解雇や降格、給与減額などの不利益な扱いを受けることです。例えば、育児休業を申請した職員に対して「業務の都合で休まないでほしい」などと圧力をかける行為がこれに該当します。

状態への嫌がらせ

妊娠・出産そのものを理由に、重要な役職や職務から外す、または妊産婦の能力を不当に低く評価することです。妊娠を告げた職員に対し「もう役に立たない」「体が弱くなるから配慮が必要だ」などの発言を行い、本人が本来の能力を発揮できないようにする行為も含まれます。

法律的には、雇用機会均等法第9条第3項がマタニティハラスメントを禁止しています。この規定は、女性労働者が妊娠・出産に関連することで不利益な取り扱いを受けないようにすることを求めています。また、育児介護休業法は、育児休業などを取得した労働者に対して不利益な取扱いを禁止しており、この点では男性も保護されています。そのため、マタニティハラスメントは妊娠・出産・育児に関わる男女労働者への不利益な扱いを広く指しています。

寺院における使用者の留意点

マタニティハラスメントを防止するためには、寺院としても以下の点を強く意識しなければなりません。

  1. ハラスメント防止のための体制構築
    職場内でマタニティハラスメントが発生しないよう、予防的な取り組みが必要です。具体的には、従業員向けに定期的な研修を実施し、妊産婦や育児中の職員が適切な支援を受けられるような職場環境を整えることが求められます。妊娠や出産、育児に対する理解を深めることで、職員全体の意識向上を図ることが効果的です。
  1. 相談窓口の設置と対応
    寺院では、妊娠・出産・育児に関する相談を受けるための窓口を設置し、職員が安心して相談できる環境を整備することが大切です。雇用機会均等法第11条の3では、使用者は労働者の相談に対応する体制を整えることが義務付けられています。寺院内で信頼できる相談役を任命し、問題が発生した場合に迅速に解決できる体制を築くことが求められます。
  1. 法令の遵守と使用者責任
    ハラスメントの発生を防止せずに放置していると、寺院が使用者としての責任を問われる場合があります。例えば、債務不履行責任や使用者責任を追及されるリスクがあるため、職場環境の整備と労働者の管理を怠らないことが肝心です。特に、寺院のような組織では、住職や関係者が職員の生活にも密接に関わることが多く、法的責任を軽視できません。法律を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐことが寺院の運営者としての使命です。

寺院運営における具体的な対応策 

  1. 職場規則の整備
    寺院でも一般企業と同様に、就業規則を明文化し、妊娠や育児に関する制度を明確に定めることが推奨されます。これにより、職員が自身の権利を理解し、必要な支援を受けられる環境が整います。規則には、育児休業の取得方法や復職後の業務内容に関する規定も含めることで、職員に安心感を与えます。
  1. 柔軟な勤務体制の導入
    妊産婦や育児中の職員には、短時間勤務や在宅勤務などの柔軟な働き方を提供することが望ましいです。職場の規模によっては、即座にこれらを導入するのが難しい場合もありますが、個別の事情に応じた配慮を検討することが法令遵守の一環となります。
  1. 研修やセミナーの実施
    定期的な研修を通じて、職員のマタハラに対する意識を啓発することも有効です。研修の内容には、具体的な事例や法律の知識を盛り込み、寺院の実情に合わせた解決策を提示することが効果的です。

弁護士に相談するメリット

マタニティハラスメント問題に関しては、法律の専門家である弁護士に相談することで、さまざまなメリットが得られます。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、寺院の特有の事情を熟知した専門家が迅速かつ的確なアドバイスを提供します。

法的リスクの早期把握

法的な視点からリスクを早期に特定し、予防策を講じることで、トラブルを未然に防ぐことができます。特に、寺院は宗教法人としての特別な立場があり、一般の企業とは異なる法務対応が必要です。

トラブル発生時の迅速対応

もしマタハラ問題が発生した場合でも、迅速な対応が可能です。弁護士が適切な助言を行うことで、法的手続きがスムーズに進みます。加えて、訴訟リスクの軽減や問題解決の早期化が期待できます。

最新法令への対応

雇用関連法は頻繁に改正されますが、弁護士は常に最新情報を把握しています。寺院の経営者として、最新の法改正に適応することが、長期的な運営の安定につながります。

まとめ

職場環境を守ることは、寺院の円滑な運営にも不可欠です。マタニティハラスメントを未然に防ぐことは、職員の安心感を高め、長期的に組織の安定に寄与します。私たち弁護士法人長瀬総合法律事務所では、寺院が抱えるあらゆる法的課題に対応しておりますので、問題が生じた際にはぜひご相談ください。

 


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